マツダの新世代ラージ商品群第一弾として登場し、国産SUV市場に大きな衝撃を与えたCX-60。
FR(後輪駆動)ベースのプラットフォーム、新開発の縦置き直列6気筒エンジン、そして欧州プレミアムブランドにも真っ向から勝負を挑む質感など、これまでの国産車にはなかった本格的な走りの志向を持つモデルとして、発表当初から多くのクルマ好きの熱視線を集めてきました。
あれから約3年――。市街地での試乗や短時間のインプレッションでは見えてこない、「日常の足として使い倒したからこそ分かるリアルな評価」が気になっている方も多いはずです。
今回は、実際にCX-60を3年間、様々なシチュエーションで乗り込んだ筆者が、オーナー目線のメリットとデメリットを包み隠さず徹底レビューします。購入を検討している方の背中を押す、あるいは冷静に検討するための材料となれば幸いです。
1. オーナープロフィールと所有背景:なぜCX-60を選んだのか

まずは、筆者の愛車の仕様と、どのような環境でCX-60と暮らしてきたのかという前提を共有しておきます。
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愛車グレード: XD エクスクルーシブモード(3.3L 直列6気筒ディーゼルターボ)
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所有期間: 約3年(2023年新車購入)
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主な用途: 平日の通勤(市街地・幹線道路)、週末のワインディングロード、ロングドライブ(高速道路メイン)
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これまでの愛車遍歴: NB(2代目) ロードスター、KE(初期型) CX-5。ロードスターの人馬一体に魅了されて以来、マツダ車を乗り継いできました。
元々、FF(前輪駆動)ベースのSUVが多い中、「FRレイアウトで、しかも直列6気筒ディーゼルを縦置きする国産SUVが出る」というニュースを聞いた瞬間、胸が高鳴ったのを覚えています。「マツダが本気で作ったプレミアムFRスポーツSUVにどうしても乗ってみたい」という純粋な好奇心と衝動から、購入を決意しました。
2. クルマ好きが唸る!3年間乗って感じた「圧倒的なメリット」
3年間、日常から非日常までを共にしてきて、CX-60が持つ本質的な魅力は、やはり「走りの質感」と「所有欲を満たすデザイン」に集約されていると感じます。ここでは、特に推したい3つのメリットを深掘りします。
① 直6ディーゼル&FRが生み出す「唯一無二のドライビングプレジャー」

CX-60の最大の美点は、やはりパワートレインとシャシーが生み出す走りのフィーリングです。
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怒涛のトルクと滑らかな回転フィール: 3.3L直列6気筒ディーゼルターボエンジンが叩き出すぶ厚いトルクは、アクセルを踏み込んだ瞬間から車体を軽々と押し出します。最高出力だけでなく、低回転域から湧き出るトルクのおかげで、車体の重さを意識させません。また、4気筒ディーゼル特有のガラガラ音が綺麗に調律されており、直6ならではの滑らかな回転上昇フィールは、現代のディーゼルエンジンとしては最高峰の出来栄えと言えます。高速道路の合流や追い越し加速では、アクセルを踏み増した分だけ淀みなく加速していく余裕があり、長距離ドライブの疲労感を劇的に軽減してくれます。またトルコンレス8速ATを採用しているため、加速までアクセルを踏み込んでから加速するまでもたつくことがなく、スムーズです。
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FR(後輪駆動)レイアウトが生むハンドリングの妙: 前輪が「舵取り」に、後輪が「駆動」に専念できるFRの恩恵は絶大です。ワインディングロードでステアリングを切ったときのノーズの入り方は、同クラスのFFベースSUVでは到底味わえないリニアで自然なもの。コーナーのエイペックスに向かってスッと鼻先が向き、リアのトラクションを感じながら立ち上がっていく感覚は、まるで少し車高の高いスポーツセダンを運転しているかのような錯覚にとらわれます。
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高速巡航時の圧倒的なスタビリティ: ホイールベースが長く、直進安定性が非常に高いため、アウトバーン的な速度域(もちろん日本国内の法定速度内ですが)でのクルージングは驚くほど静かで快適です。風切り音やロードノイズの遮音性も高く、まさに「グランドツーリング」の名にふさわしい仕上がりです。
② 所有欲を満たし続ける「色気のあるエクステリア&インテリア」

エクステリアデザインにおいて、マツダが提唱する「魂動デザイン」のひとつの到達点が見て取れます。
ロングノーズ・ショートデッキという古典的なFRスポーツカーの黄金比をSUVに落とし込んでおり、斜め後ろから見たときのリアフェンダーのグラマラスな膨らみや、キャビンが後ろにグッと引き下げられたプロポーションは、駐車場にとまっている姿を見るだけでもニヤリとしてしまいます。塊感がありながら、光の当たり方で表情を変えるボディカラーの深みも特筆すべき点です。
また、インテリアに関しても、エクスクルーシブ系のグレードでは本杢目やナッパレザー、独特の織物をあしらったインパネなど、素材の選定に妥協がありません。スイッチ類の節度感やダイヤルを回したときの「カチッ」とした感触に至るまで、欧州のプレミアムブランド(BMWやアウディ、メルセデスなど)の同クラスと比較しても、質感の高さで引けを取らないレベルに達しています。
③ 妥協なき「ドライビングポジション」の最適化
マツダ車全般に言えることですが、アクセルペダル、ブレーキペダル、そしてステアリングの位置関係が、人間の骨盤や関節の動きに対して完璧に調和するように設計されています。
他社のSUVに乗ると、どうしても「足を前に投げ出す姿勢」や「不自然に体を捻る姿勢」になりがちですが、CX-60は骨盤をしっかりと立てた自然なドライビングポジションが取れます。これが3年間、何百キロというロングドライブをこなす中でどれほど助けられたか分かりません。腰や肩への負担が少なく、「運転が終わったあとの体の疲れ方が明らかに違う」という点は、クルマ好きであればあるほど大きなメリットとして実感できるはずです。
3. オーナーだからこそ語れる、ここは改善してほしい「デメリット」
一方で、手放しで褒めちぎるだけではリアルなレビューとは言えません。特にオーナーの多くが直面した「現実」や、3年間乗る中で気になって仕方のなかったデメリットについても、包み隠さずお伝えします。
① 特有の「足回りの硬さと突き上げ感の強さ」
CX-60の評価を大きく分けた最大のポイントが、この「乗り心地」です。
発売当初のモデルは、スポーツ性を重視しすぎたのか、低速域(市街地での段差や荒れたアスファルト)において、サスペンションが非常に硬く、リアの突き上げ感がダイレクトに室内に伝わってきました。
高速道路やある程度スピードが乗るワインディングでは、フラットライドで素晴らしい足さばきを見せるだけに、「なぜ街乗りではこんなにゴツゴツするのか」と疑問を抱かざるを得ませんでした。特に後部座席に人を乗せた際には「乗り心地が硬いね」と言われることが多く、ドライバー以外の同乗者からのウケが芳しくなかったのは正直なマイナスポイントです。 (※その後の年次改良等でかなりマイルドに改善されてはいますが、根本的な骨格の硬さは残っています)
② 多発した「電子制御・パワートレインのギクシャク感」
新世代のプラットフォーム、新開発の8速ATなど、マツダにとって「新機軸」を詰め込みすぎた弊害か、納車初期の段階では制御系のアラが目立ちました。
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8速ATの変速ショック: トルクコンバーターを使わない湿式多板クラッチを採用した新開発の8速ATは、特に低速域(1速から2速、2速から3速へのシフトチェンジ時)において、ギクシャク感や「カクン」という変速ショックが頻発しました。渋滞時のノロノロ運転などでは、意図しないタイミングでギアが変り、運転していてストレスを感じる場面が少なからずありました。
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マツダコネクトの不具合: インフォテインメントシステムの起動が遅かったり、ドライバーパーソナライズで登録済みのドライバーが選べないといった電子的なトラブルも初期ならではの洗礼でした。
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先進安全装備(i-Activesense)の過敏さ: 狭い路地でのすれ違い時や、路肩の障害物を過剰に検知して急ブレーキ(被害軽減ブレーキ)が作動しそうになるなど、ドライバーがヒヤッとするような誤作動・過敏な挙動が何度かありました。
これらは数々のソフトウェアアップデート(リコールやサービスキャンペーン含む)によって徐々に改善されていきましたが、「新車初期ロットを買うリスク」を身をもって体感した部分でもあります。
③ 日本の道路環境における「取り回しの難しさ」
ボディサイズは、全長4,740mm × 全幅1,890mm × 全高1,685mm。
数字で見ると「最近のミドル〜ラージSUVとしては標準的」に思えますが、前述の通り、直列6気筒エンジンを縦置きしている関係でロングノーズ(ボンネットが非常に長い)なデザインになっています。運転席からの着座位置やボンネットの先端までの距離感を掴むのに、最初はかなり苦労しました。
「どこに行くにもサイズを気にせずスイスイ行ける」というクルマではないため、都市部や駐車スペースが限られた環境に住んでいる方にとっては、日常の足として使う上で確かなストレス要因になり得ます。
4. 3年間の維持費・燃費の実態と、オーナーのリアルな金銭感覚
クルマ好きとして気になるのは、やはりランニングコストでしょう。3年間、日常的に相棒として連れ添った中でのリアルな数字を公開します。
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実燃費: 通勤メインの市街地走行では、車体の重さやディーゼルが温まりにくい環境も手伝って約11〜13km/L程度。しかし、ひとたび高速道路を使ったロングドライブに出かければ、燃料タンクの大きさと相まって約19〜21km/Lという驚異的な高燃費を叩き出してくれます。3.3Lの大排気量エンジンのパワーウェイトレシオを考えれば、燃料代のランニングコストは非常に経済的と言えます。
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メンテナンス・消耗品: タイヤサイズが大きいため、タイヤ交換の際のイニシャルコストはそれなりに覚悟する必要があります。また、ディーゼルエンジンゆえにオイル交換のサイクル・指定オイルの厳守など、一般的なガソリンコンパクトカーに比べると「可愛がり方」に少し気を使う必要があります。
5. 総評:CX-60は「じゃじゃ馬」か、それとも「最高の相棒」か?
3年間、酸いも甘いも噛み分けてCX-60と付き合ってきた結論として、このクルマは「誰にでも手放しで万人におすすめできる優等生SUV」ではありません。
初期型特有の足回りの硬さや、制御系のギクシャク感、日本の道路には少し大きすぎるボディなど、購入後に「おや?」と首をかしげる瞬間がなかったと言えば嘘になります。実用性や快適性、誰が乗ってもスムーズな乗り心地を最優先するファミリーカーを探している人にとっては、正直ストレスを感じる場面が多いはずです。
しかし、それらのネガティブな要素を補って余りあるほどの、「強烈な個性の魅力」がこのクルマには宿っています。
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重厚感のあるFRのハンドリングフィール
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踏み込んだ瞬間に胸をすく直6ディーゼルの圧倒的なトルク
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所有しているだけで満たされる、艶やかなエクステリアデザイン
ディーラーでの度重なるアップデート(リフレッシュプログラム等)を経て、初期のトランスミッションのギクシャク感や足回りの不満もかなり洗練され、現在は見違えるほど乗りやすいクルマへと進化を遂げています。
「多少のクセや手がかかる部分があっても、運転すること自体の歓びや、所有する悦びをプライオリティの最上位に置きたい」
そんな情熱を持ったドライビングマニアや、クルマとの対話を心から楽しめる人にとって、CX-60は今なお唯一無二の選択肢であり、共に人生の景色を変えてくれる「最高の相棒」になり得る実力を秘めています。
もし購入を迷っているなら、ぜひ初期型のマイナス面だけでなく、ディーラーで最新のアップデートが施された試乗車に乗り、この直6FRの官能的な世界を体感してみてください。きっと、その魅力の虜になるはずです。
